メトホルミンは、2型糖尿病の第一選択薬として世界中で使われてきました。アメリカ糖尿病協会(ADA)や欧州糖尿病研究協会(EASD)の2022年ガイドラインでも、依然として最初に勧められる薬です。でも、多くの人が誤解しています。"胃腸の不快感がひどい"、"B12が足りなくなる"、"長く飲むと体に悪い"--これらは本当でしょうか?
メトホルミンは本当に胃腸にきついのか?
はい、始めはきついことがあります。研究によると、メトホルミンを飲み始めた人の約28%が、下痢や吐き気、腹痛を経験します。これはプラセボ群の約16%と比べて、はっきりと多い数値です。でも、ここで大事なのは、この不快感は時間がたつとほとんどの人が慣れるということです。
15年間にわたる追跡調査(DPPOS)では、最初の数ヶ月で症状が一番ひどかった人が、2年目以降はプラセボ群と同じくらいの不快感しか感じなくなっていました。つまり、ほとんどの人は「慣れ」ます。なぜなら、メトホルミンは腸管に直接作用して、一時的に消化を乱すからです。でも、体はそれに適応するのです。
もし、最初の2週間でやめたくなるほどつらいなら、やり方を変えるだけで大丈夫です。まず、食事と一緒に飲む。次に、朝と夜に分けて飲むのではなく、夜だけの1回で済む「長時間効果型(XR)」に切り替える。この2つの変更だけで、下痢の頻度は半分以下に減ります。ある研究では、IR(通常型)からXRに切り替えた患者の下痢率が18%から8%まで下がりました。Redditで「Type2Warrior87」というユーザーは、最初はひどい下痢に悩まされたが、XRに変えてから6ヶ月間、まったく問題がなくなったと書いています。
それでも、4%の人は副作用でやめてしまいます。でも、それは「薬が悪い」のではなく、「始め方が悪い」ことが多いのです。急に1000mgを2回飲むのではなく、500mgから始めて、1週間ごとに少しずつ増やしていく。このゆっくりした段階的な増量で、やめる人の割合は15%から4.7%まで減りました。薬のせいではなく、飲み方の問題です。
B12欠乏は本当のリスクなのか?
はい、これは真実です。長くメトホルミンを飲んでいると、ビタミンB12の吸収が悪くなることが分かっています。4年以上飲み続けた人の約19%で、B12レベルが明らかに下がっているという研究もあります。これは、メトホルミンが腸のB12吸収に関わるタンパク質の働きを弱めるからです。
でも、怖がる必要はありません。なぜなら、B12欠乏は簡単に見つけて、簡単に直せるからです。B12が足りないと、疲れやすくなったり、手足がしびれたり、貧血になったりします。これらの症状が出たら、すぐに血液検査をすればいい。医師は、1〜2年ごとにB12値をチェックすることを勧めています。特に、すでに神経の問題や貧血がある人には、必須です。
欧州では、2〜3年ごとのチェックを義務付けているところもあります。アメリカでは「定期的に」という曖昧な表現ですが、実際には、メトホルミンを飲んでいる人は、年に1回の血液検査にB12を含めるのが普通になっています。B12が足りないなら、安価なサプリメントで補えばいい。1日1000μgの経口サプリで、ほとんどの人が正常値に戻ります。薬の効果を失うリスクよりも、B12を補うほうがはるかに簡単です。
10年、15年飲んでも大丈夫?
メトホルミンの長期安全性について、最も信頼できるデータは、20年以上前に始まった「糖尿病予防プログラム(DPP)」の追跡調査です。この研究では、15年間、メトホルミンを飲み続けた人と、そうでない人を比べました。
結果は明確でした。肝臓や腎臓の機能に悪影響は見られませんでした。肝臓や腎臓が悪い人以外では、乳酸アシドーシス(めったに起こらない重篤な合併症)のリスクは極めて低く、10万人年に3〜10例と、雷に打たれる確率より低いです。また、体重も減り続けました。他の糖尿病薬は太らせますが、メトホルミンは10〜15年経っても、体重を2〜3%減らし続けたのです。
血中のヘモグロビンやヘマトクリット値は、最初の1年だけ少し下がりましたが、その後は安定しました。これは、B12の影響ではなく、メトホルミンが赤血球の生成を少し抑える作用があるからです。でも、これは問題ではなく、むしろ糖尿病患者がよく見られる「血液がドロドロする」状態を改善する効果とも考えられています。
つまり、メトホルミンは「長期使用で体を壊す薬」ではありません。むしろ、他の薬と比べて、最も安全で、最も長く使える薬の一つです。アメリカの臨床医学会は、「糖尿病の初期治療で、メトホルミンより優れた薬はまだない」と明言しています。
なぜ他の薬が増えても、メトホルミンが第一選択なのか?
ここ数年、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬が人気です。これらは心臓や腎臓を守る効果があり、体重も減らせるので、注目されています。でも、それらは高い。1か月の費用が1万円以上することもあります。
一方、メトホルミンは、2023年時点で、米国では30日分で4〜10ドル(約600〜1500円)で手に入ります。ジェネリック薬だからです。そして、1600万回以上処方されています。世界で最も使われている糖尿病薬です。
効果もしっかりしています。血糖値を下げるだけでなく、インスリンの働きを改善し、肝臓からの糖の過剰放出を抑えます。他の薬は「インスリンを増やす」か「尿で糖を出す」のどちらかですが、メトホルミンは「糖の作りすぎを止める」根本的な働きをします。
だから、ADAは「最初に勧める薬」として、2023年も変更しませんでした。新しい薬は、メトホルミンにプラスして使うためのものです。たとえば、メトホルミンとSGLT2阻害薬を1錠にした複合薬も、すでに7種類がFDA承認されています。つまり、メトホルミンは「基盤」なのです。
どうすれば、メトホルミンを上手に使い続けられるか?
メトホルミンを続けるための、実践的なコツをまとめます。
- 食事と一緒に飲む--空腹時に飲むと、胃腸の不快感が強くなります。朝食、夕食のときがベスト。
- 最初は500mgから--いきなり1000mgを飲まない。1週間ごとに500mgずつ増やしていく。
- XR(長時間効果型)に切り替える--1日1回、夕食か就寝前に飲むだけで、副作用が半減します。
- B12を年に1回チェックする--特に、しびれや疲れが増したら、すぐに血液検査を。
- やめないで続ける--最初の2〜4週間が勝負。耐えれば、その後はほぼ問題なし。
糖尿病 Daily のフォーラムでは、342人の回答者のうち、68%が最初に副作用を感じましたが、79%は対策を取って飲み続けました。その理由は「血糖値が安定したから」。体調が良くなったからです。
メトホルミンは完璧な薬ではありません。でも、他の薬と比べて、最もバランスの取れた選択肢です。副作用は避けられないけど、管理できる。B12のリスクは確かにあるけど、検査で防げる。長期使用は問題ないどころか、むしろ推奨される。あなたの糖尿病治療の基盤として、この薬を正しく使うことが、最も賢い選択です。
メトホルミンを飲んでいて、下痢が止まらないときはどうすればいいですか?
まずは、食事と一緒に飲んでいるか確認してください。次に、通常型(IR)から長時間効果型(XR)に変更する。1日1回、夕食または就寝前に飲むと、副作用が大幅に減ります。それでも続くなら、医師に相談して、1日量を減らして再スタートする方法を検討してください。急にやめるのではなく、ゆっくり減らすのがポイントです。
メトホルミンでビタミンB12が足りなくなるのは本当ですか?
はい、本当です。4年以上飲み続けた人の約19%でB12値が低下することが研究で示されています。特に、高齢者やベジタリアン、貧血や神経症状がある人はリスクが高いです。年に1回の血液検査でB12値をチェックし、低ければ1日1000μgのサプリメントで補えば、ほぼ正常に戻ります。この対策は簡単で、メトホルミンの効果を失うことはありません。
10年以上メトホルミンを飲んでも安全ですか?
はい、安全です。15年間の追跡調査では、肝臓や腎臓の機能低下、乳酸アシドーシスなどの重篤な副作用は、健康な人ではほとんど見られませんでした。むしろ、体重が減り続け、血糖値が安定したままです。唯一の注意点は、腎機能が低下している人(eGFRが30未満)は医師と相談して使用を再評価する必要があります。
メトホルミンは太る薬ですか?
いいえ、逆です。他の糖尿病薬(インスリンやスルフォニルウレア)は体重増加の副作用がありますが、メトホルミンは体重を減らす効果があります。10〜15年間の研究で、平均して2〜3%の体重減少が維持されました。これは、食欲を少し抑える作用と、脂肪の蓄積を防ぐ働きによるものです。
メトホルミンをやめた方がいいケースはありますか?
腎機能が著しく低下している場合(eGFRが30未満)、重度の肝疾患がある場合、心不全や酸素不足の状態(例:重度の肺炎、心筋梗塞)のとき、またはアルコール依存症で頻繁に飲酒している場合は、使用を中止する必要があります。それ以外の場合は、副作用を管理しながら継続することが、長期的な健康にとって最良の選択です。