HPV感染:ワクチン接種、スクリーニング、がん予防の最新ガイドライン

投稿者 安藤香織
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9
1月
HPV感染:ワクチン接種、スクリーニング、がん予防の最新ガイドライン

HPV感染は、世界中で最も一般的な性感染症の一つです。200種類以上のウイルスが含まれるこのグループのうち、約40種類が生殖器に感染します。その中でも、HPV16型と18型は、子宮頸がんのほぼすべてのケースに関与しています。感染が長く続くと、10年から20年かけて細胞の異常が進行し、がんへとつながることがあります。でも、このがんは予防可能です。ワクチンと適切な検診で、ほぼ完全に防げる病気なのです。

HPVワクチンは、がんを防ぐ最初のステップ

HPVワクチンは、子宮頸がんを防ぐための最も効果的な手段です。2006年に米国で最初のワクチンが承認されて以来、世界中の多くの国で接種が広がりました。現在使われているワクチンは、HPV16型、18型だけでなく、他の高リスク型(31、33、45、52、58など)もカバーする9価ワクチンが主流です。このワクチンは、感染する前に接種することが最大の効果を発揮します。そのため、世界保健機関(WHO)は、15歳までにすべての女の子がワクチンを2回接種することを推奨しています。

日本でも、2013年から定期接種として推奨されていましたが、一時的に積極的勧奨が停止されました。しかし、2023年以降、再開の動きが本格化し、多くの自治体が無料接種を再開しています。ワクチンは、男性にも推奨されています。男性への接種は、がんの予防だけでなく、パートナーへの感染を防ぐ「集団免疫」の観点からも重要です。特に、肛門がん、咽喉がん、陰茎がんのリスクを下げる効果が確認されています。

ワクチンの効果は、臨床データで明確に示されています。フィンランドの研究では、12歳で接種した女性の子宮頸がん発症率が、接種していない世代と比べて90%以上低下しました。米国では、18歳から24歳の女性のHPV感染率が、ワクチン導入後15年で88%減少したというデータもあります。ワクチンは、がんになる前にウイルスをブロックする、まさに「予防医学の勝利」です。

スクリーニングは、ワクチンの補完として不可欠

ワクチンを接種していても、すべてのHPV型をカバーしていないため、検診は続けなければなりません。特に、ワクチン接種が普及していない世代や、接種が不完全だった人にとっては、検診が命を守ります。

従来の子宮頸がん検診は、細胞を採取して顕微鏡で見る「細胞診(パップ検査)」が主流でした。しかし、2020年以降、多くの国で方針が大きく変わりました。今では、HPV検査を最初のスクリーニングとして使う「主導型HPV検査」が推奨されています。これは、がんの前段階の細胞変化を、より正確に見つけられる方法です。

米国癌協会(ACS)は、25歳から65歳までの女性に対して、5年ごとのHPV検査を最優先の選択肢としています。米国予防医療作業部会(USPSTF)も、30歳から65歳までに、HPV検査5年ごと、または細胞診3年ごと、または両方の同時検査(コテスト)5年ごとを推奨しています。日本でも、2024年以降、厚生労働省のガイドラインが見直され、HPV検査の導入が本格化しています。

HPV検査の優れている点は、その感度です。細胞診は、がん前病変を約55%の確率で見つけますが、HPV検査は95%近くの確率で見つけられます。つまり、細胞診では見逃してしまう異常が、HPV検査では見つかるのです。ただし、HPV検査は陽性反応が出やすいというデメリットもあります。でも、これは「見逃しを減らすための代償」であり、長期的にはがんの発生をより効果的に防げます。

検査の方法は、進化し続けている

HPV検査の技術も、急速に進化しています。現在、米国FDAで承認された主な検査キットは2種類です。一つはロシュの「cobas HPV Test」、もう一つはホロジックの「Aptima HPV Assay」です。どちらも、14種類の高リスク型HPVを検出できます。特にcobasは、16型と18型を個別に検出し、他の12型はまとめて検出する仕組みです。この情報は、どの程度のリスクがあるかを判断するのに役立ちます。

そして、もう一つの大きな進歩が、「自己採取検査」です。これまで、検査には医師による内診が必要でした。でも、今では、自分で膣に綿棒を挿入して、自分でサンプルを採取できるキットが登場しています。カイザーパーマネンテの2024年ガイドラインでは、自己採取によるHPV検査が、医師が採取したサンプルと同等の精度を持つと認定しました。感度は84.4%、特異度は90.7%で、ほぼ同じです。

この自己採取のメリットは、大きいです。内診が苦手な人、通院が難しい人、地域の医療資源が不足している人にとって、検診のハードルが劇的に下がります。オーストラリアやオランダの実施例では、自己採取を導入したことで、検診受診率が30~40%向上しました。日本でも、2025年までに、自治体の無料検診で自己採取キットの提供が広がる見込みです。

女性が自宅でHPV自己採取キットを使用中。

異常が出たら、どう対応する?

HPV検査で陽性になったからといって、すぐにがんというわけではありません。ほとんどの感染は、1~2年で自然に消えます。問題は、長く続く「持続感染」です。そのため、陽性の場合は、さらに詳しい検査が必要です。

まず、16型と18型が陽性かどうかを確認します。この2種類は、がんのリスクが最も高いので、すぐに精密検査(子宮頸部生検)を勧められます。他の高リスク型が陽性の場合は、細胞診(パップ検査)の結果と合わせて判断します。異常な細胞が見つかった場合にのみ、生検に進みます。この「トリアージ」の仕組みは、過剰な検査を減らし、患者の負担を軽減します。

もし、細胞診で「不審な細胞(ASC-US)」と出た場合も、現在はHPV検査を追加するのが標準です。これにより、本当にリスクの高い人だけを精密検査に送ることができます。

世界と日本の現状:格差と課題

世界では、WHOが「2030年までに90-70-90目標」を掲げています。90%の少女が15歳までにワクチン接種を終え、70%の女性が35歳と45歳で高精度な検査を受け、90%の異常が見つかった人が適切な治療を受けることです。この目標が達成されれば、2120年までに6200万~7700万件の子宮頸がんを防げると言われています。

しかし、現実は厳しいです。高所得国では80%の女性が検診を受けていますが、低・中所得国では19%にすぎません。日本では、検診受診率は約40%と、他の先進国と比べて低めです。特に、20代~30代の若い女性の受診率が低いのが課題です。

また、人種的な格差も存在します。米国では、黒人女性の子宮頸がん死亡率が白人女性の70%以上高いというデータがあります。これは、医療へのアクセスの違いや、検診の受けにくさが原因です。日本でも、地方や経済的に困難な環境にある女性たちに、検診の機会が十分に届いていない現状があります。

AIが子宮頸がん検査を分析する未来の医療シーン。

未来への道:AIと長期スクリーニング

今後、子宮頸がんの予防はさらに進化します。2023年1月、米国FDAは、AIが細胞診の画像を分析する「Paige.AI」を承認しました。AIは、人間の医師よりも微細な異常を検出できる可能性があり、検査の精度と効率を高めます。

また、検診の間隔も見直されています。米国癌学会の研究では、2回連続でHPV検査が陰性だった女性は、6年間は安全である可能性が高いと示されています。今後、5年ではなく6年ごとの検診が標準になる可能性もあります。

そして、ワクチンと検診の両方を徹底すれば、2060年までに、世界中の子宮頸がんの発生率が10万人あたり4人以下にまで下がるという予測もあります。これは、WHOが定める「公衆衛生的排除」の基準です。つまり、がんが「珍しい病気」になる日が、遠くない未来に訪れる可能性があるのです。

あなたにできること:今すぐ行動する3つのステップ

  1. 10代~20代の女性は、HPVワクチンを接種しましょう。2回または3回の接種で、がんのリスクを最大限に下げられます。
  2. 25歳以上になったら、5年ごとにHPV検査を受けましょう。自己採取キットがあれば、自宅で簡単にできます。
  3. 検診を受けるのが怖い、面倒だ、と思うなら、その気持ちを理解します。でも、1回の検診が、あなたの命を守る可能性があります。

子宮頸がんは、昔は「死に至る病」でした。今は、ワクチンと検診で、ほとんど防げる病気になりました。あなたが今、この情報を読んでいるということは、すでに一歩踏み出しているのです。次は、行動に移す番です。

HPVワクチンは男性にも必要ですか?

はい、必要です。男性にHPVワクチンを接種することで、肛門がん、咽喉がん、陰茎がんのリスクを下げることができます。また、パートナーにウイルスをうつさないという点でも重要です。特に、複数のパートナーがいる場合や、女性のパートナーがワクチンを受けていない場合は、接種を強くお勧めします。

ワクチンを打っていれば、検診はいらないのですか?

いいえ、検診は続けなければなりません。現在のワクチンは、すべてのHPV型をカバーしていません。また、ワクチンを受ける前にすでに感染していた場合、そのウイルスによる影響は防げません。検診は、ワクチンの「セーフティーネット」です。

HPV検査の結果が陽性だと、がんになるということですか?

いいえ、陽性でもがんになるわけではありません。ほとんどのHPV感染は、1~2年で自然に消えます。問題は、長く続く「持続感染」です。陽性でも、16型や18型でなければ、通常は様子を見ます。精密検査が必要なのは、ごく一部の人だけです。

子宮頸がん検診は、何歳から何歳まで受けたらいいですか?

25歳から65歳までが対象です。25~29歳は、5年ごとにHPV検査を。30~65歳は、5年ごとのHPV検査が最優先です。65歳以上で、過去10年以内に2回以上陰性の結果がある場合は、検診をやめてもよいとされています。

自己採取キットは、信頼できますか?

はい、信頼できます。カイザーパーマネンテやオーストラリアの研究では、医師が採取したサンプルとほぼ同等の精度が確認されています。感度は84.4%、特異度は90.7%で、実用レベルに達しています。特に、検診を受けていない人にとって、この方法は大きな助けになります。

1 コメント

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    Ryo Enai

    1月 11, 2026 AT 05:23
    ワクチンより5Gの方が怖いよね😅

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