ジェネリック薬は、ブランド薬と同じ有効成分を含み、特許が切れた後に登場する安価な代替薬です。米国では処方薬の90%がジェネリックですが、薬全体の費用のわずか23%に過ぎません。この差が、ジェネリック薬が医療費をどれだけ抑えているかを物語っています。しかし、価格が安定しているわけではありません。ある年は大幅に下がり、次の年には2倍、3倍に跳ね上がる薬も珍しくありません。
ジェネリック薬の価格はなぜ下がるのか
ジェネリック薬の価格が下がる主な理由は、競争です。ブランド薬の特許が切れて最初のジェネリックが市場に出ると、価格は通常、ブランド薬の10%程度まで下がります。しかし、2社、3社と参入が増えると、価格はさらに急落します。FDAのデータによると、3社以上の競合がいる場合、価格はブランド薬の52%まで下がります。4社以上になると、15%以下になることもあります。
たとえば、心臓病の治療薬であるリシノプリルのジェネリックは、競合が増えるにつれて、価格が10年で87%下がりました。一方で、同じ期間で、抗菌薬のニトロフルラントインは1,272%も値上がりしました。なぜ同じジェネリック薬なのに、こんなに違うのか?答えは「競合の数」です。
価格が急騰する薬の共通点
価格が急騰するジェネリック薬には、共通のパターンがあります。それは、製造会社が3社以下しかいないことです。Harvard Medical Schoolの研究では、価格が100%以上上昇したジェネリック薬の78%が、製造者が3社以下の市場で発生していました。
2013年から2018年の間に、製造会社が1社しかいなかった薬の価格は、平均で300%以上上昇しました。ある薬では、製造会社が1社だけになった直後に、価格が1,000%以上跳ね上がったケースもあります。なぜか?競争がなく、価格を自由に決められるからです。製造会社は、需要が安定していて、代替薬がない薬を「利益の源泉」として扱うようになります。
この問題は、製造業界の集中化が進んだことで悪化しています。2013年には150社以上がジェネリック薬を製造していましたが、2018年には80社に減りました。今では、上位10社が市場の70%を支配しています。小さなメーカーは撤退し、残った大手だけが価格を左右するようになっています。
年ごとの価格変動の実態
ジェネリック薬の価格は、年ごとに大きく揺れ動きます。2023年には、ジェネリック薬全体の価格はわずか4.9%上昇しました。しかし、この平均値は誤解を招きます。なぜなら、その中で約40種類の薬が、平均で39%も価格を上げていたからです。なかには、1年で100%以上上がった薬も多数ありました。
Medicaidのデータを見ると、2013~2014年の間に、8.2%のジェネリック薬が100%~500%の価格上昇を経験しています。この傾向は、2020年代に入っても続いています。GoodRxの調査では、リシノプリルのジェネリックが、2022年1月から2023年12月の間に247%も値上がりしました。Walmartで処方された価格が、4ドルから45ドルに跳ね上がったという患者の声も、SNSで広がっています。
一方で、価格が安定している薬も多数あります。全体の60%のジェネリック薬は、年間の価格変動が5%以内です。しかし、価格が大きく動く15%の薬が、ジェネリック薬全体の支出の60%を占めているのです。つまり、ほとんどの薬は安いままですが、少数の薬が医療費を押し上げているのです。
なぜ薬の価格は急に変わるのか
価格変動の裏には、製造と供給の問題があります。FDAは、2023年に海外のジェネリック製造工場の23%で品質問題を発見しました。これらの工場が一時的に生産を停止すると、その薬の供給が不足し、価格が急騰します。
たとえば、ある抗生物質の製造工場がFDAの検査で不合格になると、その薬は数ヶ月間、市場から消えます。需要は変わらないのに、供給がゼロになる。すると、残ったメーカーは価格を引き上げざるを得ません。このように、価格の急騰は、単なる「利益追求」ではなく、供給の崩壊によって引き起こされることが多いのです。
また、米国では、薬の価格を決める仕組みが複雑です。薬局が支払う実際の価格(AAC)と、保険が支払う基準価格(AWP)の差は、平均で22%もあります。小さな薬局は、この差に苦しんでいます。ある薬の仕入れ価格が急に上がると、保険が支払う金額は変わらないため、薬局は赤字で売らざるを得なくなります。
ジェネリック薬の価格と保険の関係
Medicare(高齢者医療保険)の加入者の37%が、ジェネリック薬の価格上昇で薬を飲むのをためらっています。28%は、薬の代金が高すぎて、処方された量を半分に減らしたり、数日分だけしか飲まなかったりしています。
この問題は、薬の価格が「安くなった」からといって、すべての人が恩恵を受けているわけではないことを示しています。ジェネリック薬は平均でブランド薬の80~85%安いですが、一部の薬は、それでも月に100ドル以上かかるのです。特に、心臓病やうつ病の治療薬は、用量が多いため、総額が高くなりがちです。
2024年1月から、Medicaid(低所得者向け医療保険)のルールが変わりました。それまで、製造会社はMedicaidに最も低い価格を提供すればよかったのですが、それ以上の割引が求められるようになりました。この変更は、ブランド薬の価格引き下げを促しましたが、ジェネリック薬には影響が限定的でした。なぜなら、ジェネリックの価格は、競争と供給の問題に左右されるからです。
価格を抑えるための実用的な方法
ジェネリック薬の価格が上がったとき、患者がとれる行動はいくつかあります。
- GoodRxやSingleCareのようなアプリを使う:これらのアプリは、近くの薬局の実際の価格を比較できます。多くの場合、保険を使うよりも安くなります。2023年の調査では、ジェネリック薬の平均節約額が112.50ドルでした。
- 3ヶ月分を一括購入する:薬局によっては、3ヶ月分を買うと単価が下がります。特に、毎日飲む薬では効果的です。
- 薬局に「代替薬」を聞く:同じ効果を持つ別のジェネリック薬がある場合、価格が安いことがあります。医師に相談して、処方を変えてもらうのも一つの方法です。
- 医療援助プログラムを調べる:製薬会社が提供する無料または低価格のジェネリック薬プログラムがあります。たとえば、アピキサバン(エリクシップのジェネリック)の場合は、メーカーが患者支援を提供しています。
薬局のスタッフに「この薬、もっと安い方法ありますか?」と聞くだけでも、節約できることがあります。多くの薬剤師は、価格変動の情報を持っています。彼らは、薬の価格がいつ上がったか、どのメーカーが安いのか、熟知しているのです。
今後の見通し:価格は安定するのか
今後、ジェネリック薬の価格は、どうなるでしょうか? Congressional Budget Officeの予測では、2030年までにジェネリック薬の価格は年1.5%しか上がらないと見られています。これは、ブランド薬の2.5%より低い数字です。しかし、これは「平均」の話です。特定の薬では、価格が急騰し続ける可能性があります。
FDAは、製造会社が3社以下の薬について、承認プロセスを20%早めることを計画しています。これは、新しいメーカーが市場に参入しやすくするためです。また、FTC(公正取引委員会)は、価格が異常に上がったジェネリック薬のメーカーを対象に、12件の調査を進めています。
しかし、根本的な問題は解決していません。製造業界の集中化は進んでおり、供給の脆弱性は高まっています。海外の工場の品質管理が不十分なまま、米国市場への依存度は高まっています。
結局のところ、ジェネリック薬は「安い薬」ですが、それは「すべての薬が安い」という意味ではありません。一部の薬は、価格が不安定で、患者の生活に深刻な影響を与えています。この問題を解決するには、単に「もっとジェネリックを出せ」というだけでなく、製造と競争の構造そのものを変える必要があります。
ジェネリック薬は本当に安全ですか?
はい、ジェネリック薬はブランド薬と同じ有効成分、同じ用量、同じ効果を持ち、FDAの厳しい基準を満たして製造されています。FDAは、ジェネリック薬がブランド薬と「治療的に同等」であることを確認した上で承認しています。製造工場も、ブランド薬と同じ基準で検査されます。安全性に差はありません。
ジェネリック薬の価格が上がったとき、どうすればいいですか?
まず、GoodRxやSingleCareで近くの薬局の価格を比較してください。保険を使わないで、現金で買うほうが安い場合があります。次に、薬剤師に「同じ効果の別のジェネリックはありますか?」と聞いてみてください。製造会社が違うだけで、効果は同じ薬が、価格が安いことがあります。さらに、製薬会社の患者支援プログラムを調べることもおすすめです。
ジェネリック薬の価格が急騰するのは、なぜですか?
主に2つの理由があります。1つ目は、製造会社が1~2社しかいないため、競争がなく価格を自由に決められる状態になることです。2つ目は、海外の工場で品質問題が起き、供給が一時的に止まってしまうことです。この2つが重なると、価格が数ヶ月で数倍になることもあります。
ジェネリック薬とブランド薬、どちらが得ですか?
ほとんどの場合、ジェネリック薬が得です。価格は80~85%安くなり、効果は同じです。ただし、価格が急騰しているジェネリック薬は、ブランド薬よりも高くなることもあります。その場合は、保険の適用や代替薬を検討する必要があります。ジェネリック=安い、とは限らないのが現実です。
薬局がジェネリック薬の価格を変えるのは、なぜですか?
薬局は、仕入れ価格に応じて販売価格を変える必要があります。製造会社が価格を上げると、薬局もそれに合わせて価格を上げざるを得ません。特に、小さな薬局は、保険が支払う金額と実際の仕入れ価格の差が大きいため、赤字を避けられず、価格を上げるしか選択肢がありません。