メディケイドのジェネリック薬カバー範囲:州ごとの違いと要件

投稿者 安藤香織
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17
1月
メディケイドのジェネリック薬カバー範囲:州ごとの違いと要件

メディケイドのジェネリック薬は、州によってまったく違う

アメリカのメディケイドは、低所得者向けの公的医療保険です。この制度では、ジェネリック薬のカバーが基本ですが、どのジェネリック薬がカバーされるかどれだけの自己負担が必要か医師の許可がどれだけ必要かは、州によって大きく異なります。カリフォルニアでは、ジェネリック薬の処方をスムーズに受けられる一方、コロラド州では、特定の薬を処方する前に、他の薬を試して失敗した証明が必要になることもあります。これは単なる行政の違いではありません。あなたの薬が手に入らない、あるいは高すぎるという現実につながります。

ジェネリック薬は、メディケイドの中心的な薬

メディケイドが年間処方する薬のうち、84.7%はジェネリック薬です。2024年度のジェネリック薬の支出は387億ドルに達し、全体の薬剤費の28.3%を占めています。つまり、ジェネリック薬がなければ、メディケイドの財政は崩壊します。連邦政府は、ジェネリック薬の価格を抑えるために「連邦上限価格(FUL)」を設定しています。これは、製薬会社が支払うリベートに基づいて、各州がジェネリック薬に支払う最大額を決める仕組みです。ただし、州はこの上限より低い金額を設定できます。そのため、ある州では1回分のジェネリック薬が1ドルで手に入る一方、別の州では3ドルかかることがあります。

自動ジェネリック置換:41州で強制

41の州では、医師がブランド薬を処方しても、薬剤師が「治療的に同等」なジェネリック薬に自動的に置き換えることが法律で義務づけられています。コロラド州では、この置換が必須です。ただし、例外もあります。たとえば、患者がブランド薬に長く慣れ親しんでいて、急に変えると体調を崩す可能性がある場合。あるいは、ジェネリックの方がブランドより高価な場合(珍しいケースですが、まれにあります)です。この自動置換は、コストを抑えるだけでなく、患者の治療継続性を守るためにも重要です。しかし、このルールが州ごとに違うため、患者が州を移動すると、今まで飲んでいた薬が突然使えなくなるという事態が起きています。

自己負担(コ・ペイ)は最大8ドルまで、でも州によってゼロ

メディケイドは、低所得者向けなので、自己負担は基本的に低く抑えられています。連邦ルールでは、収入が連邦貧困ラインの150%以下の人は、非優先ジェネリック薬に対して最大8ドルの自己負担を課すことができます。しかし、実際には、20の州ではジェネリック薬の自己負担をゼロにしています。ニューヨークやワシントン州では、ジェネリック薬は無料です。一方、テキサスやフロリダでは、2~5ドルの自己負担が一般的です。この差は、州の財政状況や政治的優先順位によって決まります。自己負担が1ドルでも高くなると、薬を飲むのをやめる人が増えます。アメリカ医師会の調査では、自己負担が3ドル以上になると、慢性疾患の患者の薬の継続率が15%以上下がることがわかっています。

コロラドの医師が大量の書類に圧倒される一方、カリフォルニアでは薬剤師が無料のジェネリックを渡す対比。

事前承認:州によって「まるで迷路」

事前承認とは、薬を処方する前に、州のメディケイドが「この薬は必要だ」と認める手続きです。ジェネリック薬でも、事前承認が必要な州があります。コロラド州の例では、胃の薬を処方する場合、まず3種類の優先ジェネリックNSAIDsを試して失敗し、さらに3種類のプロトンポンプ阻害薬も試してダメだった場合にのみ、次の薬が承認されます。このプロセスは、医師が1回の処方につき平均15.3分を費やします。年間で、医師一人あたり約8,200ドルの行政コストが発生します。一方、カリフォルニア州では、ジェネリック薬のほとんどに事前承認は不要です。この差は、患者の健康に直接影響します。ペンシルベニア大学の研究では、事前承認で薬の処方が拒否された患者の入院率が12.7%上昇したと報告されています。

フォーミュラリー:薬のリストが州ごとに違う

各州は、メディケイドでカバーする薬のリスト(フォーミュラリー)を独自に作っています。このリストは通常、3~5段階の階層に分かれています。Tier 1はジェネリック薬、Tier 2はブランド薬、Tier 3は高価なジェネリックや特殊薬です。Tier 1の薬は、自己負担が最も低く、事前承認もほとんど必要ありません。しかし、どの薬がTier 1に入るかは、州によってまったく異なります。たとえば、ある州では、糖尿病のジェネリック薬AがTier 1ですが、別の州では同じ成分の薬BだけがTier 1で、薬AはTier 3に落ちています。これは、薬品流通会社(PBM)の契約内容や、州の薬価交渉力によって決まります。CVSケアマーキ、エクスプレス・スクリプツ、オプタム・リックスの3社が、全米37州のメディケイド薬剤サービスを管理しています。この寡占構造が、州ごとの差を生んでいる一面もあります。

薬剤師の置換権限:12州では医師の許可不要

ジェネリック薬の置換は、薬剤師の仕事です。28の州では、薬剤師がジェネリックに置き換えるとき、医師に通知する義務があります。しかし、12の州では、薬剤師が「治療的に同等」と判断すれば、医師の許可なしに勝手に置き換えられます。この自由度が高い州では、患者は薬局で「今日はこの薬に変えておきますね」と言われても、驚きません。しかし、通知義務のある州では、薬が変わったことに気づかないまま、副作用が出るケースも報告されています。特に高齢者や認知症の患者にとっては、薬の変更が混乱を招きます。

コスト削減とアクセス拡大の二つの薬剤師ロボットが薬のリストを巡って戦うアニメ風バトル。

州ごとの実情:コロラドとカリフォルニアの対比

コロラド州のメディケイド「Health First Colorado」は、非常に厳格な管理を特徴としています。薬の承認には、臨床的なエビデンスに基づく複雑な基準が使われます。例えば、関節炎の薬を処方するには、まず3種類のNSAIDsを試し、その上で3種類の胃薬も試して失敗した証明が必要です。このルールは、無駄な薬の使用を防ぐためですが、患者の負担は大きくなります。一方、カリフォルニア州のMedi-Calは、ジェネリック薬のアクセスを最大限に促進しています。事前承認はほぼなく、自己負担はゼロ。薬剤師の置換権限も広く認められています。この違いは、政治的選択の結果です。コロラドは「コスト削減」を優先し、カリフォルニアは「アクセスの公平性」を優先しています。

今後の変化:抗肥満薬とリベートの見直し

2025年、連邦メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)は、メディケイドに抗肥満薬を必須カバーする新たな規則を提案しました。もし実施されれば、470万人以上のメディケイド加入者が、新しい薬を使えるようになります。しかし、この規則には大きな課題があります。抗肥満薬のジェネリックはまだほとんどなく、ブランド薬の価格は1か月で1,000ドルを超えることもあります。州は、このコストをどう賄うのか? 一方で、連邦政府は、ジェネリック薬のリベート(製薬会社が支払う割引)から、価格上昇分のリベートを除外する法案を検討しています。もし通れば、州の収入は年間12億ドル減る可能性があります。その結果、多くの州がジェネリック薬のカバーを縮小するかもしれません。

薬局の参加率:バーモントは98%、テキサスは67%

ジェネリック薬がいくら安くても、薬局がメディケイドを受け入れなければ、患者は薬が手に入りません。バーモント州では、98.2%の地域薬局がメディケイドの支払いを受け入れています。一方、テキサスでは67.4%にとどまっています。その理由は、支払い額が低すぎるからです。ある薬局経営者は、「ジェネリック薬1錠あたりの利益が10セント。手間と時間をかけて、10セントの利益?」と語っています。薬局が参加しないと、患者は遠くの薬局まで行かなければならず、薬を飲むのをやめてしまうリスクが高まります。

あなたがすべきこと:自分の州のルールを確認する

メディケイドのジェネリック薬カバーは、あなたの生活に直結します。自分が住む州のフォーミュラリー(薬のリスト)を確認しましょう。州のメディケイドウェブサイトで「Preferred Drug List」や「Formulary」を検索してください。薬の名前を入力すれば、それがTier 1か、事前承認が必要か、自己負担はいくらかがわかります。医師や薬剤師にも、必ず「この薬はメディケイドでカバーされますか?」と聞いてください。薬が変わったとき、なぜ変わったのか、次の選択肢は何か、を理解することが、あなたの健康を守ります。