特薬と注射薬の費用を減らすための実践的な方法

投稿者 宮下恭介
コメント (0)
12
1月
特薬と注射薬の費用を減らすための実践的な方法

特薬(特殊薬剤)や注射薬は、がん、関節リウマチ、多発性硬化症、C型肝炎などの複雑な慢性疾患の治療に使われます。これらの薬は、月に1,000ドル以上することも珍しくなく、全体の処方薬の2%以下なのに、医療費の約50%を占めています。2023年のデータでは、アメリカの特薬市場は2,000億ドルを超え、年間10~12%のペースで成長しています。企業や保険者は、この費用の急増に直面しており、一人あたり月額34.50ドルの支出が平均です。でも、この費用を減らす方法はちゃんとあります。無理なく、でも効果的に。

処方箋管理で無駄を減らす

まず、最も基本的な方法は「処方箋管理」です。つまり、薬を出す前に「本当に必要か?」をチェックする仕組みです。たとえば、GLP-1受容体作動薬(減量薬)の場合、一部の保険者は、患者が他の薬を試した後にのみこの薬を承認する「ステップセラピー」を導入しました。その結果、月額で13.64ドルの削減が実現しました。これは、10万人の加入者で年間1,600万ドル以上の節約になります。

この方法のポイントは、「薬を出さない」ことではなく、「正しい薬を、正しいタイミングで」出すことです。医師が適切な薬を処方するよう、薬剤師がバックオフィスでチェックし、必要なら医師にフィードバックを送ります。このプロセスは、患者のアクセスを阻害しないように設計されています。実際、87%の企業がこの方法に満足しており、患者の服薬継続率も12~15%向上しました。

限定薬局ネットワークで価格を下げる

特薬は、普通の薬局では扱えないことが多いです。冷蔵保存が必要だったり、専門的な指導が必要だったりするからです。そこで、保険者が「特定の薬局だけ」に限定して契約する方法があります。これは「限定ネットワーク」と呼ばれます。

たとえば、CVSの特薬専門薬局ネットワークに限定した場合、契約価格が10~15%安くなります。3年間で13億ドルの薬費に対して10%の節約が実現したケースもあります。患者は、指定の薬局に薬を配送してもらえたり、薬剤師からの電話サポートを受けられたりします。実際、患者の満足度は7.2から8.7(10点満点)に上がりました。

ただし、最初は不満が出ます。「なぜうちの薬局を使わせないの?」という声です。22%の企業が、ネットワーク変更時にコールセンターの問い合わせが増加したと報告しています。でも、6~9ヶ月の準備期間と、丁寧な説明で乗り越えられます。患者には「新しい薬局の方がサポートが手厚い」と伝えるのがコツです。

バイオシミラーに切り替える

「バイオシミラー」とは、特薬(バイオ薬)とほぼ同じ効果を持つ、後発薬のことです。元の薬と比べて、価格は平均で50%安いです。FDAは2023年10月までに42種類のバイオシミラーを承認しています。

たとえば、関節リウマチの治療薬「アダリムマブ」のバイオシミラーは、月額3,000ドルから1,500ドルに。1年で1,800ドルの節約になります。アメリカの医療システム全体で、今後5年間で1,800億ドルの節約が見込まれています。

でも、導入が遅れている理由があります。医師が「新しい薬は怖い」と思っているからです。実際、ASHP(米国薬剤師協会)の調査では、医師の半数以上が「バイオシミラーの効果を信じていない」と答えています。これを変えるには、医師向けの教育が必要です。薬剤師が「この薬は、臨床試験で元の薬と同等の効果を示した」というデータを、定期的に共有することが効果的です。

病院での高額注射と自宅での安価な注射の対比シーン。

注射場所を変えるだけで半額に

特薬の多くは、病院で注射や点滴を受けます。でも、実は、その多くは「自宅やクリニックで十分」です。量子ヘルスの調査では、患者の63%が病院で受けていた注射が、自宅や医師の診療所で可能だと判明しました。

病院での注射は、1回あたり平均1,200ドルかかります。一方、クリニックでは600ドル、自宅では400ドル以下。つまり、場所を変えるだけで、48%のコスト削減です。180万件の患者データを分析した結果、91%のケースで安全に移行できました。

この変更には、医療機関同士の連携が必要です。病院は利益を失うので、反対する場合もあります。そこで、クリニックや在宅医療サービスに「公平な報酬」を設定することが鍵です。病院の利益を減らさず、他の場所で治療するインセンティブをつけるのです。

自己負担をゼロにする仕組み

メーカーが提供する「コペイクーポン」は、患者の自己負担をゼロにしてくれます。でも、このクーポンは「保険の自己負担額にカウントされない」ため、患者は高額な保険の自己負担上限に達しにくくなります。その結果、保険者は患者の費用をもっと払わなければならなくなります。

そこで登場するのが「コペイマキシマイザー」です。これは、クーポンの金額を「自己負担額にカウントさせる」仕組みです。患者は「0円で薬を手に入れられる」まま、保険者は「自己負担上限に達して、それ以降の薬代を負担しなくて済む」ようになります。

ケアロンRXのデータでは、この仕組みで企業の特薬支出を5~8%削減できた事例があります。患者の満足度も下がらず、むしろ「薬代がゼロで助かる」と喜ばれています。

医療チームが『効果に応じて支払う』契約を手にしている様子。

価値に基づく契約:薬の効果に応じて支払う

最も先進的な方法は、「薬が効いたら払う、効かなかったら払わない」です。これを「価値に基づく契約」と言います。

たとえば、あるがんの治療薬が、6か月後に腫瘍が縮小しなければ、メーカーが全額返金する契約。あるいは、糖尿病の新薬でHbA1cが下がらなければ、次の分の薬を無料にする。このような契約は、2023年には前年比45%増加しました。

この方法は、メーカーにとってもリスクがあります。だからこそ、薬の効果が本当にあると証明できるものだけが導入されます。医師の評価、患者のデータ、血液検査の結果をリアルタイムで確認できるシステムが必要です。導入には技術的負担がありますが、長期的には、無駄な薬を減らし、本当に効く薬だけを広めることにつながります。

まとめ:どの方法を組み合わせるかが勝負

「1つの方法だけで全部を解決」はできません。なぜなら、特薬のコストは、製薬会社の価格設定、医療現場の使い方、保険の仕組み、患者の行動--すべてが絡み合っているからです。

最も効果的なのは、この5つの方法を組み合わせることです:

  1. 処方箋管理で無駄な使用を防ぐ
  2. 限定薬局ネットワークで購入価格を下げる
  3. バイオシミラーに切り替えて価格を半分にする
  4. 注射場所を病院からクリニックや自宅に移す
  5. コペイマキシマイザーと価値に基づく契約で、支払いを最適化する

これらの方法を1年以内に導入すれば、企業の特薬支出の成長率を10~12%から5~7%に抑えられる見込みです。2027年までに、業界全体で450億~600億ドルの節約が可能と予測されています。

患者にとっても、薬のアクセスは守られます。むしろ、サポートが手厚くなり、自己負担がゼロになるケースが増えます。医師にとっても、無駄な処方を減らせるので、治療に集中できます。

コスト削減は、患者を犠牲にすることではありません。むしろ、無駄をなくして、本当に必要な人に、正しい薬を届けるための仕組みです。

特薬の費用を減らすために、患者は何をすればいいですか?

まず、処方された薬が「バイオシミラー」かどうかを薬剤師に聞いてみてください。次に、注射が必要な薬なら、「病院で打つ必要があるのか?」と医師に確認しましょう。自宅やクリニックでできる場合、費用が半額以下になることがあります。また、メーカーのクーポンを使っているなら、保険会社が「コペイマキシマイザー」を提供していないか確認してください。これで、自己負担がゼロのまま、保険の自己負担上限に早く到達できます。

バイオシミラーは安全ですか?

はい、安全です。FDAは、バイオシミラーが元の薬と「臨床的に同等」であることを確認してから承認します。つまり、効果も副作用もほぼ同じです。2023年までに42種類が承認され、使用実績は1,000万人以上にのぼります。特に、関節リウマチやがんの治療では、多くの医療機関で標準的な選択肢になっています。

病院で注射するのと、自宅で注射するの、どちらがいいですか?

安全性と効果は同じです。病院で注射するメリットは、医療スタッフがすぐに対応できる点ですが、多くの特薬は、患者が自分で注射できるように設計されています。自宅で注射すれば、通院の手間がなくなり、費用も40~50%安くなります。保険者が「在宅注射サポートプログラム」を提供している場合、薬剤師が訪問して指導してくれることもあります。

保険者が「限定薬局」を指定するのは、患者の自由を奪っているのですか?

いいえ。限定薬局は、特薬の管理を専門にした薬局です。普通の薬局では、冷蔵保存や専門的な説明ができないことがあります。限定薬局では、薬剤師が毎月患者に電話で服薬状況を確認し、副作用の対応もしてくれます。実際、患者の満足度は、限定薬局の方が高いです。選択肢が少ないという不満はありますが、その分、サポートが手厚いのです。

価値に基づく契約は、普通の患者には関係ないの?

関係あります。価値に基づく契約は、保険者がメーカーと結ぶ契約ですが、その結果、保険者は「効果のない薬」を保険でカバーしなくなります。つまり、保険料の上昇を抑え、本当に効く薬だけが残る仕組みです。結果として、患者はより効果的な治療を受けられるようになります。メーカーも、効果のない薬を売る必要がなくなるので、開発に集中できます。

特薬の費用は、これからも増え続けます。でも、それを「仕方ない」と諦めないでください。正しい方法で、無駄を減らし、効果を最大化する道はあります。あなたが保険者なら、今すぐ5つの戦略を検討しましょう。あなたが患者なら、自分の薬について、薬剤師や医師に「もっと安くできないか?」と聞いてみてください。小さな一歩が、大きな節約につながります。