オピオイド性便秘の予防と処方薬:効果的な対策を知る

投稿者 安藤香織
コメント (1)
28
11月
オピオイド性便秘の予防と処方薬:効果的な対策を知る

オピオイド薬は痛みをしっかり抑える効果がありますが、その代償として、多くの人にオピオイド性便秘という深刻な副作用をもたらします。これは単なる「便がでない」ではなく、腸の動きが鈍り、水分が過剰に吸収される生理的な変化です。治療を中断したくないのに、便秘がひどすぎてオピオイドの用量を減らす患者が少なくありません。実は、オピオイドを長期で使っている人の40%から95%がこの便秘に悩まされています。そして、他の副作用(吐き気やめまい)は時間がたつと軽くなるのに、この便秘だけはずっと続きます。

なぜ普通の便秘薬が効かないのか

普通の便秘には食物繊維を増やしたり、マグネシウムやセンナのような刺激性下剤を使うのが一般的です。でも、オピオイド性便秘では、この方法がうまくいかないことが多いんです。その理由は、オピオイドが腸の神経に直接作用して、消化液の分泌を止め、腸の蠕動運動を抑えるからです。食物繊維を増やしても、腸が動かなければ、繊維は発酵してガスがたまり、お腹が張るだけ。場合によっては、便が固まって詰まる「便石」のリスクさえ高まります。

アメリカの消化器病学会も、オピオイド患者への高繊維食の推奨を2020年に見直し、25~40%の患者で症状が悪化する可能性があると明言しています。つまり、普通の便秘対策は、この病態には逆効果になることがあるのです。

まずは予防から:治療開始前の準備

オピオイドを始める前に、便秘対策を始めるのがベストです。医師は、まず患者に「便秘が起きる可能性がある」と説明し、便の状態を確認するためのスケール(例:ブリストル便形態スケール)を使って基準値を記録します。このステップを飛ばすと、後で「いつから悪くなったか」がわからず、対処が遅れます。

治療開始と同時に、第一選択薬として「ポリエチレングリコール(PEG)」を処方するのが標準的です。1日17~34gを水に溶かして飲みます。これは便を柔らかくして、腸を刺激せずに出すタイプの下剤で、副作用が少なく、長期使用にも向いています。もし効果が不十分なら、次に「ビサコジル」や「センナ」のような刺激性下剤を追加します。これらは腸の動きを促す力が強いですが、長く使うと腸が慣れてしまう可能性があるため、医師の指示に従って使う必要があります。

第二の選択肢:オピオイドの作用を腸だけブロックする薬

第一選択薬で効かない場合、次に登場するのが「周辺作用型オピオイド受容体拮抗薬(PAMORA)」です。これは、腸のオピオイド受容体だけを遮断して、脳への痛み止めの効果は残すという、画期的な薬です。

代表的な薬は3つあります:

  • メチルナルトキソン(Relistor®):注射薬で、2~4時間で効果が現れます。がんの終末期患者に特に有効ですが、毎日注射が必要で、注射部位の痛みや赤みが47%の人に起こります。
  • ナロクセゴール(Movantik®):1日1回の経口薬。慢性疼痛の患者に広く使われ、便通の改善率はプラセボの2倍以上です。お腹の痛みが38%の人に起きる副作用です。
  • ナルクミジン(Symcorza®):2023年には小児にも認可され、幅広い年齢層で使われます。患者の6割が「中程度~大幅な改善」を実感し、副作用は比較的軽めですが、腹部不快感が報告されます。

これらの薬は月額500~1,200ドル(約7万~17万円)と高価ですが、効果が確実で、オピオイドの用量を減らさずに済むなら、価値があると多くの医師は考えています。保険会社は「まずは下剤を試してから」というステップ療法を求めることが多く、最初からPAMORAを処方してもらえないこともあります。

PEG、Movantik®、Symcorza®の3種類の薬瓶が窓辺に並び、それぞれ異なる光の効果で輝いている。

もう一つの選択肢:リブロプロストン(Amitiza®)

もう一つの選択肢が「リブロプロストン」です。これは腸の細胞に働きかけて、水分を分泌させ、便を滑らかにする薬です。2013年にFDAからオピオイド性便秘に認可されました。しかし、初期の臨床試験では男性の参加者が少なかったため、当初は女性専用の薬として扱われていました。その後、男性にも効果があることが確認されましたが、副作用として吐き気(30%)や下痢(15~20%)がよく見られます。特に、利尿薬と併用すると低カリウム血症のリスクがあるため、注意が必要です。

患者の声:試行錯誤の連続

オンラインの患者コミュニティでは、「試しては外れて、また試す」の繰り返しがよく語られています。Drugs.comのレビューでは、メチルナルトキソンの平均評価は5.6/10。効果は早いけど、注射の痛みと高価さがネックです。一方、ナルクミジンは6.8/10と評価が高く、多くの人が「生活の質が変わった」と言います。

Redditの慢性痛コミュニティでは、89件のコメントで「Miralax(PEG)」が最もよく使われていると報告されています。しかし、68%の人が「効きが足りない」と自力で量を増やしているのが現実です。痛みを我慢するのではなく、便秘を我慢する必要はないのです。

患者たちの頭上に便の状態や薬の作用を表す thought bubble が浮かぶ、クリニックの待合室のシーン。

医療現場の課題:指導はあっても、実践は追いついていない

ガイドラインはしっかり整っています。しかし、実際の診療現場では、70%以上の医師が、便秘の評価スケールを使っていません。患者が「便秘がひどい」と言っても、医師は「薬を減らすしかない」と考えがちです。でも、オピオイドを減らすと、痛みが戻ります。それは、患者にとって二重の苦しみです。

看護師の80%は、簡潔な処方アルゴリズムに「とても役立った」と答えましたが、一般の医師はたった19%しかそう思っていません。これは、治療の格差を生んでいます。大きな病院では68%が標準的な対策を導入していますが、地域のクリニックでは22~35%にとどまっています。

未来の治療:組み合わせ薬と新しい選択肢

今、臨床試験が進行中ののが「ナロクセン+PEG」の固定配合薬です。これは、下剤とPAMORAを1錠にまとめたもので、2024年半ばにもFDAの承認が見込まれています。これで、飲み忘れが減り、患者の継続率が上がると期待されています。

さらに、オピオイド性便秘の市場は2028年までに34億ドル(約5,000億円)に達すると予測されています。しかし、高価な薬を保険がカバーしないと、多くの患者は治療を断念します。日本でも、将来的には同様の課題が出てくるでしょう。

まとめ:あなたにできること

オピオイドを処方されたら、まず次の3つを行動に移しましょう:

  1. 「便秘が起きる可能性がある」と医師に確認し、便の状態を記録する(例:便の形、頻度)
  2. 最初に処方されるのは「ポリエチレングリコール」。食物繊維を無理に増やさない
  3. 1週間経っても改善しないなら、医師に「PAMORAの可能性」を聞いてみる

痛みを我慢する必要はありません。便秘も、ちゃんと治せる病気です。自分に合った薬を見つけるまで、諦めずに相談を続けてください。あなたの生活の質を守るのは、あなたの声から始まります。

オピオイド性便秘は、普通の便秘とどう違うのですか?

普通の便秘は、食事や運動不足、水分不足などが原因ですが、オピオイド性便秘は、オピオイド薬が腸の神経に直接作用して、消化液の分泌を抑え、腸の動きを鈍くするためです。そのため、食物繊維を増やしても効かないことが多く、逆にガスがたまったり、便が固まったりするリスクがあります。

食物繊維を増やした方がいいですか?

いいえ。オピオイド性便秘では、1日30gの食物繊維をとるという一般的なアドバイスは推奨されていません。オピオイドの影響で腸が動かないので、繊維が発酵してお腹が張ったり、便石ができやすくなるからです。アメリカの疼痛学会も、この方法が症状を悪化させる可能性があると警告しています。

Miralax(ポリエチレングリコール)は効きますか?

はい、最初の選択肢として効果があります。特に、便を柔らかくして自然に出す仕組みなので、副作用が少なく、長期的にも使えます。しかし、約50%の患者では十分な効果が得られず、他の薬と組み合わせる必要があります。

PAMORAとは何ですか?どんな薬がありますか?

PAMORAは「周辺作用型オピオイド受容体拮抗薬」の略で、腸のオピオイド受容体だけをブロックして、脳の痛み止めの効果は残す薬です。日本でも使えるのは「ナルクミジン(Symcorza®)」と「ナロクセゴール(Movantik®)」です。どちらも経口薬で、1日1回服用します。効果は通常、1週間以内に現れます。

PAMORAは高価ですが、保険は使えますか?

日本では、PAMORAは保険適用されていますが、多くの保険会社は「まず下剤を試してから」というステップ療法を求めるため、最初から処方してもらえないことがあります。医師に「この薬が必要な理由」を説明して、保険の申請を支援してもらうことが重要です。

オピオイドをやめれば便秘は治りますか?

はい、オピオイドをやめれば便秘は自然に改善します。しかし、痛みが再発するリスクがあります。多くの患者は、便秘のために痛みを我慢したり、オピオイドの用量を減らしたりして、生活の質を落としています。だからこそ、便秘をしっかり治療して、痛みと生活の両方を守ることが大切です。

1 コメント

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    晶 洪

    11月 28, 2025 AT 17:51

    オピオイドで便秘になるなんて、体が弱い人の言い訳だ。昔は薬なんて飲まずに我慢してた。

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