蕁麻疹と血管性浮腫とは?
蕁麻疹は、皮膚に赤く盛り上がり、かゆみを伴う腫れが現れる症状です。数時間で消えたり、別の場所に現れたりするのが特徴です。一方、血管性浮腫は、皮膚の深い層や粘膜に腫れが起こり、特に顔、唇、喉、手足に現れます。かゆみよりも、張りつめた感じや痛みが強いのが特徴です。両者は同時に起こることが多く、原因は同じことが多いですが、治療のアプローチが大きく異なります。
急性の蕁麻疹や血管性浮腫は、6週間以内に治まるものを指します。多くの場合、薬(ACE阻害薬など)、食べ物、虫刺され、またはアレルゲンの接触が原因です。一方、6週間以上続くのが慢性蕁麻疹で、日本を含む世界中で0.5~1%の人が一生のうちに経験します。このうち75~80%は原因が不明な「原因不明性慢性蕁麻疹」です。
急性蕁麻疹と血管性浮腫の治療
急性のケースでは、まず症状の重さを判断することが最優先です。喉の腫れや呼吸困難、舌の腫れ、よだれが止まらない、呼吸に補助筋を使うような状態があれば、気道の確保が緊急の課題です。この場合、エピネフリン(アドレナリン)の筋肉注射が必須です。気道が塞がる危険があるなら、すぐに気管挿管が必要になります。
呼吸に問題がなければ、まず抗ヒスタミン薬を服用します。セチリジン10mg、ロラタジン10mg、フェキソフェナジン180mgなどが一般的です。これらの薬は、ヒスタミンという物質の働きをブロックして、かゆみや腫れを抑えます。多くの患者で効果がありますが、効きにくい場合、2倍、3倍、場合によっては4倍の量まで増量することがガイドラインで推奨されています。
血管性浮腫が単独で起こり、かゆみがない場合は、ヒスタミンではなく、ブラジキニンという物質が原因の可能性が高いです。このタイプは、ACE阻害薬(高血圧の薬)が原因であることが多く、抗ヒスタミン薬やステロイドは全く効きません。この場合、薬をすぐに中止し、気道の状態を観察しながら、自然に治るのを待つのが正解です。症状は通常、3~4ヶ月で改善します。
ステロイド(プレドニゾロンなど)は、重度の症状や喉の腫れがある場合に短期間(5~10日)だけ使われます。しかし、長期使用は副作用が大きく、血管性浮腫には効果がないことが明確に示されています。そのため、ステロイドは「かゆみを抑えるため」ではなく、「気道の危険を回避するため」にだけ使うべきです。
慢性蕁麻疹の治療ステップ
慢性蕁麻疹は、根気強い治療が必要です。治療は段階的に進めていきます。
- ステップ1:非鎮静性抗ヒスタミン薬(セチリジン10mg、ロラタジン10mg)を毎日1回服用。効果が出るまで2~4週間続けます。
- ステップ2:効果が不十分なら、薬の量を2倍(セチリジン20mg)に増やします。それでもダメなら、別の抗ヒスタミン薬と組み合わせたり、夜にモンテルカスト10mgを追加します。これはNSAIDs(痛み止め)で悪化する人に有効です。
- ステップ3:さらに効果がなければ、フェキソフェナジンを最大540mg/日(朝360mg、夜180mg)まで増量します。これは処方外使用ですが、ガイドラインで認められています。
- ステップ4:上記でも効かない場合、オマリズマブという注射薬を検討します。これはIgEというアレルギーに関わる抗体をブロックする薬で、60~70%の患者で効果があります。ただし、専門医の診断と処方が必要で、月額約12万円と高価です。
治療がうまくいったら、症状が3~6ヶ月安定したら、薬の量を少しずつ減らしていきます。1錠ずつ、6~8週間ごとに減らすのが一般的です。急にやめると再発しやすいので、慎重に減薬します。
血管性浮腫の種類と治療の違い
血管性浮腫は大きく2つに分けられます。
| タイプ | 原因 | 主な症状 | 効果のある治療 | 効果のない治療 |
|---|---|---|---|---|
| ヒスタミン性 | アレルギー反応、薬、食品 | かゆみあり、皮膚に赤い腫れ | 抗ヒスタミン薬、エピネフリン、ステロイド | なし |
| ブラジキニン性 | ACE阻害薬、遺伝性、原因不明 | かゆみなし、痛みや張り、喉の腫れ | ACE薬の中止、C1エステラーゼ濃縮液、イカチバント | 抗ヒスタミン薬、ステロイド、エピネフリン |
ブラジキニン性の血管性浮腫は、遺伝性(HAE)やACE阻害薬(リサノテック、ベンザプリルなど)が原因です。このタイプでは、抗ヒスタミン薬はまったく意味がありません。エピネフリンやステロイドも無効です。治療は、原因薬の中止と、専門的な薬(C1エステラーゼ濃縮液やイカチバント)の使用が中心です。これらの薬は、病院でしか処方できません。
避けるべき薬と生活習慣
蕁麻疹や血管性浮腫の悪化を防ぐために、いくつかの薬と習慣に注意が必要です。
- ACE阻害薬:高血圧や心不全の薬(ベンザプリル、カプロプリルなど)は、血管性浮腫の最大の原因の一つです。一度でも浮腫が起きたら、絶対に再開してはいけません。ARBという別の高血圧薬(サルベタンなど)は、10%の確率で同様の浮腫を起こす可能性があるため、慎重に選ぶ必要があります。
- NSAIDs:イブプロフェン、ロキソプロフェンなどの痛み止めは、20~30%の慢性蕁麻疹患者で症状を悪化させます。痛みがある場合は、アセトアミノフェン(タイレノール)が安全な選択肢です。
- DPP-4阻害薬:糖尿病の薬(シタグリプチンなど)も、まれに(0.1~0.3%)血管性浮腫を引き起こすことが知られています。
- ストレスと過労:慢性蕁麻疹の患者では、ストレスや睡眠不足が発作を引き起こすことがあります。規則正しい生活と十分な休息が治療の一部です。
妊娠中や授乳中の対応
妊娠中や授乳中の治療は、特に慎重にする必要があります。
抗ヒスタミン薬の中では、セチリジンとロラタジンが最も安全とされています。ただし、最大量(4倍量)は避けるべきです。通常の量(10mg)なら、授乳中でも問題ないとされています。ステロイドは、短期間なら授乳中でも使用できますが、長期使用は避けます。
オマリズマブは、妊娠中には使用が推奨されていません。治療が必要な場合は、産科医とアレルギー専門医が協力して、リスクとベネフィットをよく話し合って決めます。
診断と検査のポイント
原因が不明な慢性蕁麻疹や血管性浮腫では、検査で原因を突き止めることが重要です。
- C4値:血管性浮腫の患者では、まず血液検査でC4値を測ります。この値が低いと、遺伝性血管性浮腫(HAE)の可能性が高いです。
- C1エステラーゼ:C4が低ければ、専門医がC1エステラーゼの機能や量を調べます。
- 薬の見直し:過去1~3ヶ月に使ったすべての薬をリストアップし、ACE阻害薬、NSAIDs、DPP-4阻害薬がないか確認します。
- 食事日記:特定の食品と発作の関連があるか、2週間ほど記録すると、原因が見つかることがあります。
予後と長期的な見通し
急性蕁麻疹は、適切な治療で24~48時間以内にほとんどが治ります。血管性浮腫も、原因薬を中止すれば、数日から数週間で改善します。
慢性蕁麻疹は、5年以内に65~75%の人が自然に治ります。ただし、症状が長引くと、生活の質が下がり、うつや不安を引き起こすこともあります。そのため、早期に適切な治療を受けることが大切です。
オマリズマブなどの新しい治療法が登場したことで、従来の薬で効かなかった患者でも、症状をコントロールできるようになっています。治療の選択肢が増えた今、諦めずに専門医に相談することが、回復への第一歩です。
蕁麻疹と血管性浮腫の違いは何ですか?
蕁麻疹は皮膚の表面に赤く盛り上がり、かゆみが強いです。血管性浮腫は皮膚の奥や粘膜に腫れが起き、かゆみは少なく、痛みや張りが主な症状です。喉や舌の腫れは、血管性浮腫の特徴で、呼吸困難の危険があります。
抗ヒスタミン薬が効かないのはなぜですか?
ヒスタミンが原因の場合は効きますが、血管性浮腫の多くは「ブラジキニン」という物質が原因です。このタイプでは、抗ヒスタミン薬はまったく効果がありません。原因を正しく見極めないと、無駄な治療を続けることになります。
ACE阻害薬を飲んでいて浮腫が出た場合、どうすればいいですか?
すぐにその薬を中止してください。浮腫が喉にまで及ぶと、命に関わります。病院で気道の状態を確認し、医師と別の高血圧薬(ARB)に切り替える方法を相談してください。薬をやめれば、通常3~4ヶ月で症状は消えます。
ステロイドは慢性蕁麻疹に有効ですか?
急性の重い症状や喉の腫れには短期間だけ使いますが、慢性蕁麻疹の長期治療には向きません。10日以上使うと、骨粗鬆症、糖尿病、うつ、感染症のリスクが高まります。効果も限定的で、ガイドラインでは長期使用を推奨していません。
オマリズマブはどんな人に使いますか?
標準的な抗ヒスタミン薬を4倍まで増量しても効かない、慢性の原因不明性蕁麻疹の患者に使います。月1回の注射で、60~70%の人に効果があります。ただし、専門医の診断と処方が必要で、費用は高額です。
Rina Manalu
12月 10, 2025 AT 19:32この記事、すごく丁寧にまとまっていて助かりました。
特にACE阻害薬のリスクと、抗ヒスタミン薬が効かない理由の説明がわかりやすかったです。
私も以前、顔が腫れて病院に行ったら「ヒスタミン反応」と言われて薬を出されたけど、全然良くならなくて…
まさかブラジキニン系だったとは。
今思えば、その時飲んでた降圧薬が原因だったのかもしれません。
もしまた腫れが出たら、すぐに薬をやめるようにします。
ありがとうございました。
🙏
Kensuke Saito
12月 12, 2025 AT 10:07記事の『ステロイドは気道の危険回避のためだけに使うべき』って部分、文法的にも論理的にも正しいが、『べき』の使い方が古臭い。
現代日本語では『べき』は避けるべきだ。
『使うべき』→『使うのが望ましい』って書けばいいだけ。
こういう医療情報は正確さが命なのに、言葉のセンスがガバガバ。
残念。
aya moumen
12月 12, 2025 AT 12:12ああ…この記事読んで、私の過去の苦しみが全部よみがえってきた…😭
2年間、毎日蕁麻疹と戦って、友達とも会えなくて、鏡を見るのが怖くて…
オマリズマブの話聞いて、涙が出た。
あの高額な注射、私の友達も打ってて、半年で完全に消えたんだよ…
でも保険適用外で、毎月12万円…私には無理だった…
なんでこんなに効く薬が、こんなに高いの…?
日本、医療って…本当に…
(泣)
Akemi Katherine Suarez Zapata
12月 14, 2025 AT 08:45ACE阻害薬って、普通の高血圧の薬じゃん?
なんでそんなに危険なのが普通に処方されてるの??
医者も「これで血圧下がるよ」って言うだけで、副作用の話全然しないよね?
俺の叔父も、その薬飲んで喉腫れて救急搬送されたんだよ?
医療って、患者にリスクを伝える義務ないの??
情報が足りなさすぎ。
この記事、めっちゃ大事。
拡散しよ。
芳朗 伊藤
12月 14, 2025 AT 10:48オマリズマブの効果率60~70%って、そんなに高くないよな?
あとで『原因不明性』って逃げてない?
100人中70人しか効かない薬を、12万円も払って打つって、正気か?
それより、まずはNSAIDsやDPP-4阻害薬の見直しを徹底しろよ。
薬漬けの日本医療、また同じパターンだ。
ryouichi abe
12月 15, 2025 AT 18:26この記事、めっちゃ参考になった!
特にC4値の検査の話、初めて知った!
俺の母も昔、顔が腫れてて、病院で「アレルギー」って言われてたけど、実はHAEだったのかも…
今度、検査してみようと思う。
医者に「C4とC1エステラーゼ、調べてもらえますか?」って言ってみようかな。
誰か、検査の方法教えてくれると助かる!
Yoshitsugu Yanagida
12月 17, 2025 AT 00:47『原因不明性慢性蕁麻疹』って、医者がわからないからつけてるラベルだよね?
本当は、ストレスとか、腸内フローラとか、環境ホルモンとか、ちゃんと調べてないだけじゃない?
薬でごまかして、原因を突き止める努力を放棄してるだけ。
『75~80%が原因不明』って、それは『医者が調べない』ってことだよ。
Hiroko Kanno
12月 17, 2025 AT 01:14NSAIDsって、ロキソニンとか普通にドラッグストアで売ってるじゃん?
でも蕁麻疹の人が飲むと悪化するって、包装に書いてないよね?
もっと患者に知らせるべきだと思う。
あと、『アセトアミノフェンが安全』って書いてあるけど、肝臓に負担かかるから、長期はダメってのも追記してほしいな~
雅司 太田
12月 18, 2025 AT 04:26オマリズマブの話、俺の友達も打ってたよ。
1回目で効果あったって言ってた。
でも、『月12万』って聞いて、俺は『無理』ってなった。
でも、1年後にまた同じ症状出たら、もう一度病院行くつもり。
命と生活の質、お金より大事だもん。
Hana Saku
12月 18, 2025 AT 10:03この記事、『抗ヒスタミン薬を4倍まで増量』って書いてあるけど、そんなことしたら副作用で死ぬ人が出るよ?
薬の量を勝手に増やすなんて、医師の指示なしでやってはいけない。
こういう情報は、『自己判断で増量するな』と明確に書かないと危険。
責任感のない記事だ。